消えた家族 | じつはぼくのくぼはつじ

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老いを認める日々のブログ

 散歩コースに二軒続きの貸家があって、道路に面した空き家の方に若夫婦が越してきた。三才と四才くらいの子持ち夫婦。子供はお兄ちゃんと妹。可愛らしい子供達で犬を連れて散歩しているわたしを見かけると、いつだって「こんにちわ~ワンワン、ワンワン」と回らぬ舌で声を上げて近づいて来た。何度か犬の頭を撫でさせたものの、あまり社交的でないわたしは、子供達とも笑顔で見守る若い母親とも言葉を交わすでもなく日が過ぎた。それが、ある日を境に子供達の姿が見えず声も聞こえなくなった。母親の姿も同時に見えない。それでもそんな異変に気づいたのは、玄関の硝子が割れ郵便受けからあふれ落ちるチラシや郵便物に気づいた時のことで、若夫婦が越して来て半年いや一年も過ぎてのことだった。 

 わたしにとって、忽然と姿を消した若い夫婦と二人の子供達も、わたしと愛犬の散歩コースから消えたり現れたりする四季折々の草花や果樹や、あるいは道端の石やガードレールや建物となんら変わるものではないのだろうか?